Murder a sponsor.

【琴音 Side.】


 真人くんが熊沢さんを追い掛けたあと、私もそのあとを追った。

 熊沢さんが走っていっちゃったのは私のせいでもあるし、もう1回、ちゃんと謝りたかったから。

 だけど、男の子の真人くんの足にかなうはずもなくて、気が付いたら私は廊下に1人だった。

 でも、諦めずに歩いていたら……廊下の角から声が聴こえた。真人くんと、熊沢さんの、声が。


「――好きなの」


 それは紛れもない、熊沢さんの声だった。ドクンッと、私の心臓は大きく跳ね上がる。すべての音が遠ざかっていくような感覚。

 聴きたく、ない。


「私、ずっと前から、北條のことが好きなの」


 それは、決定打。聞き間違いだと疑う私に対しての、決定打。

 この場にいたらダメな気がして――否、この場にいたくはなくて、私はそっと、国語準備室へと戻ったんだ。

 さっき、熊沢さんは、真人くんが私のことが好きだとか言っていたけれど、そんなこと……あるはずがない。

 熊沢さんは綺麗だし、スタイルもいいし……私と結ばれるより、熊沢さんと結ばれる方がきっと幸せだよ。

 これは叶うはずのない、私の片想いなんだ。胸の内に隠して、消し去ってしまわないと、いけない感情なんだ……。