Murder a sponsor.

 薄暗い教室の中、俺を見ている熊沢の姿が、妙に小さく見えた。


「俺の悪口なら好きなだけ言えばいい。だけどな、琴音の悪口は絶対に許さねぇ」

「な、によ……そういう白鳥さんに甘いところが気持ち悪いって……」

「だいたい、熊沢には関係のないことだろ。勝手にああだこうだと言ってくるんじゃねぇっ!」

「……っ。もう、北條なんて知らない!バカ!」


 熊沢は両目に涙をためると、走って俺の横を通り過ぎ、勢いよく教室から出ていってしまった。

 ……俺も熊沢なんて知らねぇよ。琴音の傷付くようなことを平然と言う、熊沢のことなんて。


「……くん」


 でも、いくら琴音と仲が悪い熊沢だからって、女を泣かせたのは……いい気持ちにはならねぇな……。


「真人くん!」

「え?」


 俺の肩を揺さ振りながら名前を呼ぶのは、泣きそうな顔をしている琴音だった。

 もしかして、さっきから何度も俺の名前を呼んでくれていたのか?全然、気が付かなかった……。


「追わないと……!」

「え……?」

「はやく熊沢さんを追わないと!辺りは暗くなってきているし、教室の外は何が待ち受けているのか分からないのに、1人にさせちゃったらダメだよっ!」


 琴音にそう言われて、俺は胸の辺りがキュッと痛むのが分かった。

 そうだよ……な。俺、どうかしていたんだ。外は危険なのに、熊沢に1人、出て行かせちまって……。はやく連れ戻さねぇとっ!