Murder a sponsor.

「話は後にして、まずはこのトラバサミをなんとかしないと……」


 俺がそう言うとみんなはうなずき、力を合わせてトラバサミを外そうと、力の加わっている方とは反対方向に引っ張る。しかし、あと一歩のところで完全に外すことが出来ない。

 せめて、あと1人、誰かがこの場にいてくれたら……!


「君達!大丈夫かい?!」


 ふと、頭の上から男性の声がした。顔をあげると、垂れ目が特徴的な白衣を着た大人――否、今年から新しい科学担当の教師としてやって来た、浦松翔(うらまつかける)先生がいた。

 浦松先生はまだ若い人で、俺達とそう年は変わらない。笑顔を浮かべるほんわかとした雰囲気の持ち主だが、それに見合っていてドジをよくするというか、どんくさいというか……悪く言ってしまえば、頼りなさそうな人でもある。


「先生!力を貸してくれませんか!」


 新名の呼び掛けに浦松先生はうなずき、こちらへと駆け寄ってきた。そして、俺達と同じように、トラバサミを外すために力の加わっている方とは反対方向に引っ張る。

 すると、ゆっくりながらも、足を噛んでいるトラバサミは開いていき……。


「赤羽さん!もう少しだ!」

「うん……!」


 トラバサミは完全に開き、赤羽さんは足をあげ、無事にそこから抜け出すことが出来た。