Murder a sponsor.

 俺はハサミを手にしながら、舞さんは定規を手にしながら、辺りを警戒しながらゆっくりと足を歩かせていく。

 誰かがいるのならすぐに分かるように、誰かが襲ってくるのならそれが分かるように、神経を集中させる。

 そっと、包丁やナイフが保管されてある引き出しを開けると、いくつかの刃物が消えていた。

 これは……誰かが刃物を抜き取っていったっていうことなんだろうか。

 少ししか抜き取られていないことから、これから大勢の人がここに来る可能性がある。早めにここを退散した方がよさそうだ。

 自分と舞さんの分を手にした瞬間、舞さんが不思議そうな表情を浮かべた。


「……ないわね」

「……何がだ?」


 舞さんが囁くような小さな声で言うので、俺も小さな声で聞いた。


「……遺体」


 言われてハッと気付く。

 言われて部屋を見渡してみるけど、確かに遺体がない。……血の跡はところどころにあるみたいだけど。

 誰かがここで血を流した……殺し合った?でも遺体がないということは、他の場所に移動したのか?あっ、逃げた可能性もあるのか。


「真人くん、気をつけて」

「?」

「ここ、人が隠れているわ」


 舞さんがそう言った瞬間だった。

 机の下のスライド式の扉が開き、中から勢いよく1人の女子生徒が飛び出してきた。手には包丁を持っている。


「死ねぇぇぇえいっ!!!」


 幼くて可愛らしい顔立ちには似合わない暴言を吐いたその女子生徒は、俺に向かって包丁を振り上げた。