Murder a sponsor.

 俺は少し悩んだあと、そっと琴音と向かい合わせになった。そして、琴音の頭をぽんぽんと撫でる。

 不思議そうに顔を傾ける琴音を真っ直ぐに見つめながら、俺は言った。


「大丈夫。絶対にすぐに戻るから」


 ……この世の中には、“大丈夫”も“絶対”もない。

 俺や舞さんが生きてここを出れるかなんて、誰にも分からない。

 それでも、“絶対に生きてここを出よう”っていう目標にはなる。そうなるように、必死に努力する。

 生きてここを出られる可能性はゼロじゃないけど、死んでここから出られない可能性もゼロじゃないんだ。

 この俺の言葉で、琴音が少しでも微笑んでくれるのなら、笑ってくれるのなら、それでいい。


「……分かった。気をつけてね」


 琴音は心配そうな表情を浮かべていたけど、心なしか、先程に比べたら穏やかな表情をしているように見えた。

 俺はそれに安堵の笑みを漏らす。

 再び琴音たちに背を向けた俺と舞さんは、そっと給食室の扉を開けた。

 中はシンと静まり返っていて、人のいる気配は感じられない。

 給食室の中は思っていたよりは綺麗に整頓されていて、誰かが部屋を荒らしていった様子もない。

 ……俺達以外に、まだ誰も給食室に訪れていないのだろうか?

 それにしては、給食を作ってくれる方々がいないのは変な話だが。