サイコロ【短編】

「おじさん、僕ね。
どうして生まれてきたんだろう?」



はあ?なんだこいつ。
いきなりムズい事、言うんじゃねぇよ。



「なんだよ、
生まれてきたって、
そのあれか?
生まれてきた理由ってやつ?」



「うん。
だって、パパやママを
困らせるために僕は
生まれてきたのかなぁって。
そんな理由じゃぁさ、
あまりにも悲しいよね。」



恐らく7、8歳くらいか?
ガキの歳なんてわかんねぇけど、
だけど、俺がその年の頃なんて、
今日の晩飯なんだろうとか、
テレビのアニメの続きとか
どっちにしても
大したこと考えてなかったけどなぁ。
だから、全く思い付かなかった。
何て答えてやれば良いのか
出てこなかった。
だからーーーー



「お前はどう思ってんだよ。
言ってみろよ。
聞いてやるよ。」



俺は何だったら自分の
子供でもおかしくねぇ
ガキの質問に質問で返すと言う、
卑怯な事をした。



「僕?
僕がどう思ってるかって?」



「ああ、
お前はなんで自分が
生まれてきたと思ってんだよ。
自分の事なんだから、
落ち着いて考えりゃ
ちったぁ、わかるだろが。」



無責任に言いながらも、
心のどこかで
俺自身が答えを求めていた。
こんなガキの答えに自分が求めている
ものが隠されているんじゃないかって
バカらしい期待を僅かに抱いてた。
今の俺はそれほどまでに
落ちぶれているらしい。



「うぅ~ん。
よく、分かんないから、
おじさんに聞いてるんだけど……。」



と、言いながらも、
真ん丸の目をクリクリさせながら、
考え出した。
そしてーーー



「あっ!僕ね、
今、思い出した事がある。」



「何をだよ?
何、思い出したんだ?
言ってみろ。」



俺はガキが一体、どんな答えを出すか、
あからさまに興味を示した。
俺に一体、
どんな答えをくれるんだって。
が、
期待はしちゃいねぇよ。
所詮、ガキが言うことだからな。



「ほら、言ってみろよ。」



と、
急かしてやるとーーー



「あのね、
笑わないでね。
僕ね、ママのお腹にいたときに、
ずぅーっと、
オシッコに行きたかったんだ。
でもね、
それをずっと我慢してたんだよ。
だけどさ、
ある時、もうだめだぁ~って。
もう漏れそう~ってなっちゃって。
それで、ママのお腹から出たんだよ。」



「はあ?
オシッコ?どういう事だよ。」



「あのね、
だって、かわいそうじゃん。
ママのお腹の中で僕が
オシッコしちゃったら、
ママ、困るでしょ?」



「何でだよ?」


ガキの言いたい事が
イマイチつかめず
もどかしい。



「ダメに決まってるじゃん。
僕がオシッコしちゃったら、
ママのお腹の中、
バイ菌だらけになっちゃうでしょ?
そしたらママ、
お腹痛くなっちゃうもん……」



「腹、痛くなるっつってもさぁ……。」



そういうもんじゃねぇの?
と、思うもののそこは大人らしく
続けて話を聞く。



「だから、
ママのお腹に悪いウィルスが
広がると良くないから、
早く外に出てから、
オシッコしようと思ったの。
もうママのお腹から出ようって
思ったの。
本当はね、ママのお腹の中、
フカフカしてて
気持ち良かったんだけどね。
だけど、出てきちゃった。
だからさぁーーー
それが僕が生まれた理由じゃないかな。」



「それが、か?」



俺が呆れたように言うと、



「そうだよ。
僕はママを大切にしたいんだ。
もちろん、パパのこともね。
だって、二人の事が大好きなんだもん。
だから、その為に、
僕は生まれてきたんだよ。」



得意気な顔してガキーーー


いや、


ーーーユースケが、言った。