サイコロ【短編】












「おい、本当にもう大丈夫なのか?」



「おじさん、
いい人ってだけじゃないね。
優しいじゃん。」



「バッカ、人が真面目に
心配してんのに、
からかうんじゃねぇよ、
このクソガキが。」



「おじさんって何歳なの?」



「お、俺?」



俺に対して興味を持たれたのは
一体、いつぶりだ?



「37だ。」



「ふぅん。
パパと同じくらいだね。
パパは35だよ。
パパより若く見えるよ。
おじさんらしくないもん。」



「だったら、そのおじさんって
呼ぶの止めろよ。
お兄さんでいいだろが。」



「アッハッハ、
おじさんはおじさんだよ。
それよりさ、おじさんこそ、
僕の事、クソガキっての止めてよ。
僕の名前はーーーー」



「ユースケ、だろ?」



そう呼ぶと、
クソガキ改め
ユースケは満足げな顔をした。



今、ユースケは完全に落ち着いた様で、
ベンチに俺と並んで座っている。



「お前さ、
あの病院から抜けてきたんだろ?
早く、帰んねぇと、
叱られるぞ。
父ちゃんと母ちゃん心配してるだろ?」



そう言いながら
自分でも驚いていた。
人生投げ出そうとしていた
俺の口からこんな
まともな言葉がまだ
出てくるなんてな。













「ねぇ?
僕がいなくなった方が、
いいんじゃないかな?
パパもママも……。」









真っ直ぐに俺の目を見て話す
ユースケの言葉に、
俺は
「そんなことねぇよ」
なんて軽々しく言えなかった。



ちゃんと、
答えてやらなきゃ
まずいんじゃねぇかなって
何となく思った。



だからーーーー



「お前さ、
何でそう思うんだ?
父ちゃんと母ちゃんが
何か言ってたのか?」



と、
俺にしちゃ珍しく、
真面目に聞き返した。
別に人生の最期くれぇって
訳でもねぇんだけど、
まっ、ほんの気まぐれだ。
それに、もう少しこいつの様子
見てなきゃヤバイんじゃないのか
ってのもある。
すると、ユースケはーーー



「ううん。
なんにも。
僕の事をとても大切に
してくれてる。
いつだって僕の体の事を
心配してるよ。」



「なら、いいんじゃねぇのか?」



「うん……。
だけどさ、
いつだって、苦しそうな、
悲しそうな顔してるんだ。
パパとママ。」



「苦しそうっつってもなぁ……。」



そりゃ、我が子の体の具合が悪けりゃ
仕方ねぇだろとは言えないよなぁ。



「僕さ、産まれたときから、
心臓が弱いんだって。
だから今度、
強くする手術するんだけど
お金もいっぱいかかるし、
うまくいくかどうかって……
パパとママが話してるのを
聞いたんだ。困った顔してた。
だから、僕なんていない方が、
いいのかなって。
生まれてこなきゃよかったのかなって。」



俺はいきなり、
手詰まりになった気分だった。
人生、諦めて
捨ててちまおうって
考えてる俺が、
一体、どんな希望の言葉を
かけてやれるっつうんだよ。
目の前のちっちぇガキに。