サイコロ【短編】

「ちくしょっ、
おい、なんだよ。
どうすりゃ、良いんだよ。
き、き、救急車か?」



俺はお洒落でも何でもねぇ、
ただボロボロになっただけの
ジーンズのポケットに手を突っ込んで、
思い出した。








そっか、
料金滞納で止められて使えねぇし、
もういらねぇだろって
その辺の川に投げたんだ。
くっそ、バカだな俺。
緊急の時は確か、
使えるんじゃなかったっけか?



参ったな……、
よし、こうなりゃ
直接、病院に連れてくか?



「おい、おいって……
分かるか?
しっかりしろっ。
今から病院、
連れてってやるよ。
おい?大丈夫か?」









するとーーーー





「…………もう、ダイジョウブ、、
ハァハァ、少し、したら、
落ち、着くと思う、から……おじさん、
も、う……少し……こ、のままで……」




俺はクソガキの言葉に
従う以外に選択肢を
見つけられなかった。



こんなとき、
どうすりゃいいのか、
全く知識がなかったんだ。



だからーーー



良い歳の大人が
ちっせぇガキの言葉に
従うしかできないでいた。









少しすると、
本人が言った通り、
確かに様子が落ち着いてきた。



俺は女の体とは違う
柔らかさの抱き心地に
若干、戸惑いながらも、
漸く、クソガキが
何故かパジャマ姿だという事に
気がついた。



「お前ーーーー」



恐らく、
公園のすぐ隣にある、
大きな病院から
抜けてきたんだろうって
ことくらいは、
ミステリー小説なんか
一切読まねぇ俺にでも、
簡単に推理できた。