それは、白い物体だった。

たったひとつ、まるで時代か空間に取り残されたように、ある。

真上からは円形、横からは半円に見えるそれは、どうやらつまり、半球状であるらしい。

指で、どれひとつ、つついてみた。

弾力がある。

私が指を押し出す力に、さしたる抵抗を見せはしない。

しかし、わずかに抵抗してくる。

わずかに湿度と温度を持つそれは、指を離すと、まるでもう一度つついてくれと言わんばかりに、私の指の型通り、窪みを作った。

窪んでいる。窪んだ半球になった。白くて、窪んだ半球。

観察していれば、少しずつもとに戻るかと思ったが……腰抜けめ、わずかな抵抗だけで、努力をしないらしい。

窪みは窪みのままだ。

もっといじめてやろうか。さらに突いてやろうか。その柔らかな弾性の皮一枚を貫いて、内部に爪を立てて、抉ってやろうか。

凶暴にして子供じみた感情のまま、指を立てる。