ブーッ、ブッブー



「椿、携帯鳴っとるばい」



「え?俺か」



バイブの音が響いていて、それが俺のポケットからだというのを、泰ちゃんの指摘で気付く。



相手が誰なのかを液晶で確認し、俺は席を立つ。



「すみません、お先っス」



「あれぇ、ご飯よか大事な相手ぇ?椿ちゃんいつの間にか彼女出来たと?」



食べたいものを山盛りに皿に盛ったピカ先輩に背後からニヤつかれ、俺は咄嗟に左に避ける。



「違うわ!そうだったらいいけど、家族だから」



嘘ではない。だけど、相手が誰かはこの場では言ったらいけない気がした。



液晶画面に表示された名前が『時雨槐』………俺の実の兄貴で、明日の対戦相手の選手だったからだ。



インターハイ本選に入ったら連絡厳禁って本選前日の夜に言ったのに、どうしたんだろう。