日本舞踊を舞っているようなそのプレイに、観客はうっとりとする。



ボールは巡り巡って、槐の手の中に。



ひらり、と細身の体を空中に踊らせ、ボールに回転をかけることなく放つ、魚が泳ぐような優雅なワンショット。



サウスポーのその手から放たれるショットに、相手サイドもディフェンスに困っているようだ。



時間は平等に流れているはずなのに、どこかゆっくり、スローモーションに流れるようなこの試合。



だが、時間が過ぎるのが遅く感じているという訳ではなく、40分の試合は、あっという間に終わってしまった。



「なんか……隙がなかよな。あぎゃん遅かテンポやのに」



隣の行雲先輩が長い睫毛を上下させ、瞬きをしながらコートを見つめる。



これが、王者の貫禄か。