沸き上がる歓声、勝利の喜びと敗戦の悲しみが飛び交うコートを見つめる、2階席の一角。



「やっぱり、御劔は怖いな。あいつを止めれない限り、うちも厳しいな」



一人の男が緑のフレームの眼鏡を持ち上げながら呟く。



「西村はまだまだ甘いな。御劔じゃないだろ。驚異は、寧ろ……」



「12番、小鳥遊椿。あいつッスよね。あいつが最後の10分、オフェンスもディフェンスも計算して、全員に指示出してましたから」



男に答える別の男と、もう一人は、雨音幹太。



背中には『横浜工業』の四文字を携えたジャージを着た、その三人。



「幹太、あの12番を知ってるのか?」



「はい。幼馴染み、ですから。もっともあいつは高校入るまで1on1専門。………それで判断力は半端じゃないけど、ずっとバスケをやってる俺達より、スタミナはないと見ます」



「そうだな。………明日は、難しい試合になるだろう」



水高の勝利の裏で、次の戦いに向けて、横浜工業が動き出す。