ゲーム終盤、残り5分。



水高112-60花江



試合は決まったようなものではあるが、一瞬でも気は抜かない。



秀吉キャプテンと泰ちゃんを交代させ、インサイドからガンガン攻める、速攻の陣形へ変える。



相手サイドのオフェンスの、パスコースを全て塞ぐようなスクリーンを全員に指示し、相手にゴールに行かせない。



『ディナイ』と呼ばれるこれは、一見バスケでは軽視されがちだが、とても重要。オフェンス力と運動量が全員高い花江サイドに対しては、特に有効で。



攻撃チャンスを塞ぎ、焦りを生じさせ、無理矢理打たせたワンショットは、ゴールリングに嫌われる。



「フン!!」


ガシィィン、ドォォン!!



それを豪快なリバウンドと着地で制した泰ちゃんは、直ぐ様アウトレットパスで外にいた俺へ。



「速攻ォ!」



行雲先輩、ピカ先輩、有ちん先輩が同時に走り出し、コート内で4角形の陣形を取りながら、スクエアパスで速攻。



5、4、3………タイムボードが終了の秒を刻む。



「ラスト一本!」



2秒前をカウントする前に、ぶん、とゴールに強めに投げられたボールを、水高一番のバネで飛び上がり制したのは。



「うらァッ!!」


この試合、ずっと俺の指示を守り続けて来た、暴れじゃじゃ馬姫、行雲先輩。



両手でボールをキャッチし、足が着地する前にふわり、と放たれたショットは、ブザーと共に、水高へ最後の得点をもたらす。



ピッピィィィ!!



ブザーが鳴り響き、最終的な得点は



水高118-62花江



初戦、水高の今後の試合を勢い付ける、高得点での勝利に終わった。