水高91-52花江


オフェンスの妖精が織り成す、凡人には絶対不可能なプレイに、会場が歓声に包まれる。



「まだ足りん。全く足りんわ。ボール、全部、俺にくれ。全部得点にすっばい」



普段はふにゃふにゃしているピカ先輩の、本気になった時の闘争本能剥き出しの目が、俺をギラリ、と射止める。



「いーよ。ちゃんと、俺が思う場所にいてくれればね」



ふっと笑い、ディフェンスにつくと、ピカ先輩も配置について、普段は見れない男臭い顔で笑った。



相手スローインが始まり、花江の選手が、3線でコートを突き進む。



俺達はハーフコートのマンツーマンディフェンスで、それぞれの相手についた。



多分、相手も俺達の試合を映像で確認しているのだろう。ボールはピカ先輩のついているフォワードの元へ。



………でも、残念。



ピカ先輩は、県大会の時に俺から授かった『オフェンス式ディフェンス』もう、我流で完成させてるんだよね。