7月29日。遂に、決戦の幕開け。



開会式を終えた俺達水高は、第1試合が始まるまで、各自試合を観戦したり、アップをしていた。



俺達は16時10分からの最後の組だから、結構な余裕がある。



「秀吉キャプテン、右手のマッサージ入念にやっときましょう」



「ああ、助かる」



俺は、秀吉キャプテンとアップで競技場周辺を走っていたが、木陰に入り、キャプテンの右手を親指でグリグリ、とマッサージ。



「本選は有り難いことに、一日一試合だから、右手を痺れさせることもないだろうな」



「それでも、念には念を入れなきゃ。この右手には、俺達の勝ちが、乗ってるんスからね」



俺は真剣にそう答えてマッサージを続行。



すると、頭上から、ふっと吐息のような笑い声が聞こえた。



「キャプテンさ、最近、良く笑うね」



「そうか?……まあ、お前達といるのは、今までのバスケをやって来た時間の中で、一番楽しいからな」



俺も同じ。この夏が一番楽しくて、一番あっという間に過ぎてく感覚。



だから、決勝まで行きましょ、秀吉キャプテン。