温かなゲリラ豪雨が止んだ頃には、外は少しだけ暗くなっていて。



「ねー、有ちん先輩、晩飯食ってく?」



「うん。お腹空いたし、有り難かぁ」



今日は、親父が職場から貰ってきた冷麺で、トマトときゅうりの特製冷麺でも作ろう。



「思えば、他んメンバーは小鳥遊の手料理、何回も食っとるとよね、嫉妬するわ」



「はは!いつでも食いに来てよ。有ちん先輩なら大歓迎」



その言葉に、有ちん先輩はいつも以上に爽やかに、清々しい笑顔を向けた。



「ただいまぁー!椿、頼まれてた野菜買ってきたよ…ってあれ?新しいお友達、こんにちはー!」



「え…えぇぇ!?小鳥遊のお父さんって…!あ、そうか、時雨槐君が兄弟やけん、そうなるよな。じゃなくて、挨拶!俺、初対面やのに、挨拶!」



多分、部内で一番のNBAヲタの有ちん先輩だから、目の前のオッサンに混乱してるんだろう。その人もう、ただのオッサンだぜ?



「えー、何、可愛い反応。椿のとこのバスケ部の子って、なんか皆可愛いよね」



「え、うん。俺もいつも思う」



まだアワアワしている有ちん先輩の背中を叩いて、俺は家へ上がるのを促した。