「そら!そんかテンポでやりよるなら奪うけんな!」



行雲先輩が、本能的に相手の速度を見極め、その長い腕をタイミング良く懐に潜らせて、ボールを頭上に弾くのが見える。



「いやぁ滑らかな動きやね!ばってんが、そんならこうすったい!」



また別の方を見ると、ピカ先輩がぐん、と体勢を落とし、ダムダム、とボールを素早く股下に潜らせ、左足に軸を定め、ぐるん、とディフェンスを掻い潜る。



そのスピード感と読めない技術に、凌華学院の部員達も楽しそうに練習している。



「次!コート入って!」



そう言われ、俺はコートに走っていく。



ゆるり、と俺の前に立ちはだかるのは、凌華学院の部長、桜山元治。



「君、槐ん弟なんやてなぁ」



「お手柔らかに」



手順通り構えるのを確かめ、俺は目の前の短髪の男の目を見ながら、す、と腰を落とした。