【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~

「椿、良かと?お母さんやろ?追いかけんと」



泰ちゃんに背中をポンポン、と叩かれはっと我に返る。



「いや…でも、何話したらいいか、分かんないや」



母親の記憶なんてないし、ずっと男所帯の中で育ってきたし、それを寂しいとも、思ったことなかったし。



「小鳥遊、いいから行け。後悔する前に」




秀吉キャプテンが俺の手首をガシ、と掴み、大部屋の外へ追い出す。



戻ることも出来ないから、まだ遠くに行っていない、パステルグリーンの着物を着たその人の元へ、走る。



「あっ……の!」



どうしたらいいかなんて何も決めてないけど、でも、何故だか心に広がる温かな懐かしい感情に流されるように、声を出した。



振り返ったその人は、槐と同じ切れ長の瞳から、ポロポロ、と綺麗な涙を落とす。



「泣き方が、槐と一緒」



なんて訳の分からない感想がポロッと零れて、ついでに、よく分かんないけど、口元が緩む。



その人………俺のお袋は、静かな足音で俺に駆け寄り、俺に抱き着いた。