「椿、おっちゃんに負けてたら、全国制覇なんて夢のまた夢だよ!」



「煩い!分かってるよ!」



薄暗い夏の夜空の下、親父と繰り広げられる1on1。



バスケは前より格段に上手くなってる筈なのに、未だに親父に勝てたことはない。



まあ、ピカ先輩ですら勝てないんだ。オッサンとはいえ、元NBAプレイヤー、凄いとしか言い様がない。



「ほら!フェイクが甘い甘い!」



「チッ!まだまだ!ディフェンス一本!」



左足を軸に、ザザ、とフェイクを加えてインサイドに入ろうとするが、親父はそれを簡単に弾かれてしまう。



「おらんと思ったらやっぱりバスケしよった!」



ようやく秀吉キャプテンにラブコールをしていた行雲先輩が、槐を連れてコートへやって来る。



「相変わらずお父さん、巧いどすなぁ」



足元に転がるボールを拾い上げ、槐が微笑む。



「槐、折角やし、俺と勝負せん?」



「ええどすなぁ、やりまひょか」



ポス、とボールを行雲先輩に投げた槐は、コートの真ん中を陣取る。



行雲先輩も配置につき、二人が向かい合った。