【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~

翌日、いつもはギリギリに朝練に来る行雲先輩がピカ先輩と共に30分も前に学校に来た。



「おはよぉ椿ちゃん」



「はよっス」



体力付けの参考にしようと、泰ちゃんと共に有ちん先輩の走り込みに同行した俺。眠くて死にそう。



備品の整理で朝から由貴先輩と倉庫に籠っていた秀吉キャプテンも、珍しく欠伸を品良く落としながら、練習着のタンクトップに着替えている。



「ねぇー、椿ちゃんはファーストキス、どぎゃん感じやった?」



「ぶはっ………!何、いきなり」



急な質問に飲んでいた烏龍茶少し噴いたじゃん。



同じく新しいTシャツに着替え直していた有ちん先輩と泰ちゃんも、こちらに注目する。



「いやねぇ、これからチューするゆっくんに少しでもいい印象をねぇ」



ピカ先輩はもう、行雲先輩をからかうのを生き甲斐にしてるみたい。ニヤニヤしっぱなし。



ってか、どさくさ紛れに俺とばっちりじゃね?



「はぁ……ファーストキスは中一の時先輩に奪われたかな。何か、甘ったるい味だったイメージ」



「あ、それ分かるかも。なんか、キスって甘かよね」



爽やか有ちん先輩は、俺の話にさらっと乗っかって来る。



「俺もそやったかも。何かね、女の子の唇って不思議と甘いとよ、ゆっくん」



「え…マジか、甘いんか」



ホントのところ、味が甘いんじゃなくて、その雰囲気が甘ったるいからなんだろうけどね。



行雲先輩は新たな知恵を得て、目をしぱしぱと瞬きさせている。