「椿、こん問題はどぎゃん解くと?」



「これはyをまず…」



6月下旬、チリチリと痛むような熱気を避ける、小鳥遊邸の屋根の下。



窓を開け放ち、一階の俺の自室よりずっと広い和室で、そよそよと入ってくる風に涼みながら泰ちゃんとテスト勉強。



数学の得意な俺は、泰ちゃんの質問に答えながら苦手な現代文の模擬プリントを解く。



「泰ちゃん、これさぁどこ書き抜くの?」



「これは主人公の心情ば問う問題やっけん、起承転結でいう転の部分。やから文章んここを読み解かなんけん…」



逆に、俺の現代文は泰ちゃんが教え合い、問題の趣旨を把握する。



お互いに得意科目と苦手科目が違う俺達は、テスト勉強をするには最高のパートナー。



っていうか、最高のマイブラザー。愛してるぜ、泰ちゃん。



そんな泰ちゃんが、チラッと開け放った縁側の先を見やる。



「ねー椿」



「んー?」



「………あれ、ホントに放置で大丈夫とやろうか」



バスケ部で、仏様ポジションの有ちん先輩に並ぶ優しさの塊泰ちゃんが気にするのは、あのお馬鹿達。