「なぁ、相原」


「ちょ、佐久間、近すぎっ」


「聞け」



離れようと身体をよじる相原にさらに詰め寄って、無理矢理胸の中に閉じ込める。


けど、触れはしない。


体育館の壁に右腕をつき、ギリギリの距離を保ちながら相原の左耳に唇を寄せる。



「これだけ、頭に入れてて」


「……え?」


「俺、こんなことすんのお前にだけだから」


「……っ、さく」


「からかったりなんかしてない。今までも、これからも。全部、本気だから」


「……っ、佐久間、それってどういう──」


「さぁ?自分で考えろよ」


「えっ、ちょ……」



ちゅっと気づかれないように相原の頭にキスを落として相原から離れる。


そして、くるりと背を向けて、何事もなかったかのようにコートに戻った。


途中、背後から「意味分かんないっ!」と相原の叫び声が聞こえてきて。


ゆっくりと肩越しに振り返る。



「う~。佐久間の馬鹿っ!!」



振り返った先には悔しそうに、けれど恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めている相原の姿があって。


可愛いらしいその姿にククッと喉奥が鳴った。




ばーか。

ワザとだっつーの。


いまだに叫んでいる相原にあっかんべーをして、再びボールを目指す。



相原。


悩めよ。

悩んで悩んで悩んで。


お前の頭の中、俺でいっぱいになればいい。



覚悟してろよ。


これから俺の気持ち、嫌というほど分からせてやるから。




【佐久間 side end】