恋する君の可愛いつよがり。



消え入りそうなその声に、ぎゅっと胸がしめつけられる。


今にも泣き出しそうな声はハッキリ分かるほど震えていて。


そっと視線をすべらせれば、長いまつげかかすかに揺れているのが見えた。



わずかしか残っていなかった俺の理性がもろく崩れ落ちていく。



「……っ、さく──」


「怒ってない」


「……え」


「怒ってねぇから」



壁についた右腕にグッと力を込め、相原におおい被さるように身を寄せる。


近かった距離がさらに縮まって、相原の柔らかい髪の毛が鼻先をかすめた。




「……嘘だ」


「嘘じゃない」


「嘘!怒ってたもん!!絶対怒ってた!!」


「あいは──」


「絶対絶対絶対怒ってたもんっ!じゃあなんで……」



──普通に喋ってくれないの?



最後に落とされたその言葉は聞き取れないほど小さくて。


自分の態度がどれだけ相原を苦しませていたのかを思い知った。