恋する君の可愛いつよがり。



「……相原、こっち向けよ」


「……っ」


「相原」


「……やっ、」



そっと左頬に手を伸ばせば、ビクッと小さく揺れた身体。



「………っ」



ハッキリとした拒絶に俺はようやく我に返った。



……ヤベェ。また繰り返すところだった。




「……悪い」



触れそうになった手を引っ込めて、そのまま壁へと移動させる。


それを見た相原はそっと目を閉じ、ホッと安堵のため息を吐き出した。



……そんなあからさまに安心されるとさすがにこっちも傷つくんですけど。






「話って、何?」



胸の中に収めたいという衝動を必死にかき消しながら出来るだけそう優しく問いかけると、再びゆれ動いた相原の身体。


相原は一瞬の沈黙を経たあと、うつむいたままゆっくりと言葉をつむぎ始めた。



「……なんで、」


「………」


「なんで……避けるの?」


「……っ」


「なんで……怒ってるの?」


「あいは──」


「なんで……なんで怒ってるの?」


「相原」


「ねぇ。私、分からないよ……。佐久間がなんで怒ってるか、分かんない……っ」


「……っ」