恋する君の可愛いつよがり。




【佐久間side】



──ガンッ!



「……ッ、クソッ」



ゴールリングに当たり、そのまま落下して床の上をコロコロと転がっていくボール。


息を整えながらその行く先を見届けた俺は、チッと舌打ちをしたあと、乱れた前髪をクシャッと乱暴にかき上げた。




「……はぁ」


閑散とした体育館に響く自分のため息。


重たい頭を無理に上げれば、見慣れた景色が視界に映った。


そこにはもう、さっきの騒がしさなんて微塵も残されてはいない。


けれど、今でもまだハッキリと耳に残っている。


無視し続ける俺を容赦なくく責め立てるキャプテン二人の声が。


かき消したいほどの言葉の数々が。


まだ、耳に残っている。




「どうすりゃいいんだよ……」



他人には聞かせられない俺の弱音。


静かに目を閉じれば、アイツの哀しげな後ろ姿がハッキリと浮かび上がる。


それは、どんなに頭を振っても離れてはくれない。