恋する君の可愛いつよがり。



え?今佐久間が喋っ……。



「よだれ、ついてんぞ」


「……へ?」



よだれ?


再び落とされた言葉に慌てて口元をぬぐうと。


……あれ?


それらしきものはどこにもついていない。



「ちょっと、ついてな──」



気まずかったのも忘れて文句を言おうとすれば、不意に頭に乗せられた大きな手。



「え?え?え?」


その手が佐久間の手だということを理解するのに、私はかなりの時間を要した。


佐久間はと言えばいつの間にか立ち上がっていて、上から平然とした顔で私を見下ろしている。



「バーカ」



そう一言落とした佐久間は、私の前をするりと通りすぎると男子バスケ部員と一緒にバスを降りていった。