恋する君の可愛いつよがり。


ゆ、め……?


定まらない焦点とうつろな思考。


視界に映った座席のシートを見て、つい今まで自分が寝ていたことに気がついた。



……バカだ、私。

佐久間と仲直りしようと思ってたのに。



……って、佐久間!?



その名前に、寝ぼけていた思考が一瞬にして覚醒した。


っていうかなんで座席が斜め──って、ちょ、まさかっ!?



脳裏に浮かんだある情景に慌てて身体を起こすと……。


やっぱり。



「ご、ごめん佐久間!」



何やってんの私!


最悪なことに、佐久間の肩を借りて寝ていたおバカな私。



「ホント、ごめんっ!!」



いまだかつて、こんなにも必死に佐久間に謝ったことがあるだろうか。



……あぁ、もう最悪。


よりにもよってこんな気まずい状態の時にこんな大失態を犯すなんて……。


そう思った時だった。



「──別にいい」



聞こえてきたのは、素っ気ない声。