恋する君の可愛いつよがり。



そう。

私は今、究極の選択をせまられていた。


お手洗いから帰ってくるとバスの外で集合していた部員たちはすでにバスに乗り込んでいて、トイレに行っていた私だけが外に取り残された状態。



慌ててバスに乗り込めば、一番前に座っていたななちゃん先輩に背中を押され、なぜか佐久間の元へ。



これだけ席があってなんで佐久間の隣だけ開いているのか少し疑問に思ったけど、佐久間を目の前にしたらそんなことあっという間に吹き飛んでしまった。


緊張と困惑で今にも心臓が破裂しそうだ。




佐久間が座っているのはバスのちょうど真ん中、右列の窓際。


窓枠に右肘を立て、頬杖をつきながらぼんやりと窓の外を眺めている。


佐久間はきっと私の存在なんて気づいてない。



……そう思っていたのに。



「ここが嫌なら後ろ行けよ」



耳に届いたのは独り言かと思うほど小さな声。



「……え?」


理解出来ずにそう洩らせば、窓の外に向けられていた視線がゆっくりとこちらへと向けられた。