「……からかってる?俺が?お前を?」
「……っ」
「ふざけんな」
「……っ、え、ちょ、なに!?」
佐久間の様子がおかしい。
近すぎて顔がよく見えないけど……。
もしかして、怒ってる?
「さく──」
「お前、全然気づいてないんだな」
「……え?」
気付いてない?なにが?
「もういい」
「ちょ、佐久間!?」
踵を返し、この場から去ろうとする佐久間を慌てて呼び止める。
けど、何度呼びかけても佐久間はふり返らない。
コツンコツン、と階段を下りて行く音だけがただむなしくその場に響き、消えていく。
私はその後ろ姿をただ見ていることしか出来なくて。
「……なに?意味分かんないよ」
そう呟いた時にはもう佐久間の姿は見えなくなっていた。


