「俺の前ではいいけど、他のヤツの前でその顔すんなよ?」
「……っ、さきゅっ」
むぎゅっと頬っぺたを寄せられて、変な声が出た。
ありえない!
人の顔なんだと思ってんの!?
手を退けようとするけど力が強くて。
「ククッ、ぶっさいく」
人の顔で遊んでいる佐久間は、必死にもがく私を見て楽しそうに笑っている。
何もされてなかったら、笑った顔可愛い、なんて思ってるかもしれないけど、人前でこんなことされたらさすがにそんなこと思えるわけがなく。
「……いっ”」
佐久間の魔の手から逃れるべく、目の前にある無駄に筋肉がついたお腹にパンチを繰り出した。
「……っ、おま、ありえねぇ」
「フンッ」
ざまぁみろ。乙女心をもてあそんだバツだ。
思いのほか力が強かったらしく、お腹を押さえて私をにらんでいる佐久間。
そんな佐久間を放っておいて先に行こうと振り返れば、
「ななちゃん先輩!由弦くん!」
二人がこっちに向かって歩いてきていた。


