私の声が届いたのか、叫んですぐに観客席を見上げた佐久間。



一番前で前のめりになって応援している私を見て一瞬驚いたように目を見開いたけど、すぐに笑顔になった。



その笑顔はいつもの意地悪な笑顔じゃなくて、心の底から嬉しそうなとびっきりの笑顔。



初めて見るその屈託のない笑顔に不覚にもときめいてしまった。




佐久間を見ながらポケットから取り出したのは、佐久間と色違いのリストバンド。



佐久間のイニシャル、“S”が入った私だけのリストバンド。



それを右手首に通して、左手で強く握りしめる。




──佐久間、頑張って。





そう願いを込めたとき、




「……っ」




佐久間が右手にしていたリストバンドに軽くキスを落とした。




「……っ、ばかっ」




そのリストバンドは私が誕生日プレゼントにあげたえんじ色のリストバンド。



さっき倉庫に来てくれたときにはしてなかったのにいつの間につけたんだろう。




「そんなことされたら本当に期待しちゃうんだからね。……ばか」