「……ありがとう」
由弦くんはホッと安堵のため息を吐き出して、高崎さんに笑いかける。
「……でも、すぐには諦められないです」
「……うん」
「けど、相原さんにはもう何もしません」
「うん」
「もちろん、先輩の好きな人が分かっても」
「……うん」
それだけ言うと、高崎さんは軽く由弦くんに頭を下げて歩き出した。
「相原さん」
「へっ!?」
倉庫から出ようとした時、突然呼ばれて素頓狂な声が出てしまった私。
そんな私を見てクスクス笑う由弦くん。
「……あたし、瞬くんのこと、いいなって思ったのは本当だよ」
「えっ」
「あたし、合宿の前に先輩にフラれたの」
「……」
最近のことだったんだ……。
「忘れるには新しい恋だって思った。そんなとき合宿で瞬くんと出会って、一目見て気に入っちゃった」
「…………」
「けど、すぐに相原さんのこと気に入ってるってことに気づいて、あ、またダメなんだと思った」
……え、ちょっと待って。
佐久間が私のこと気に入ってる?
うそだ。あれは気に入ってるとかそんな甘ったるいものじゃない。
気に入ってたらあんなに意地悪ばっか言わないもん。


