「……先輩の好きな人って誰なんですか?」
まさに私が聞きたかったことを高崎さんが聞いてくれて、ジッと由弦くんの目を見つめる。
「……ごめん。それは言えない」
「……っ、なんでっ」
「危険な目に合わせたくないから」
「……っ」
由弦くんの言いたいことが分かったのか、キュッと口を結んで俯いてしまった高崎さん。
高崎さんには悪いけど、由弦くんの言いたくない気持ちは分かる。
誰だって好きな人を危険な目に合わせたくないもんね。
本当に由弦くんの好きな人が私だったらきっと傷付いてるだろうから。
「高崎さん、俺はその人以外好きになることはないよ」
「……っ」
「だから、ごめん。諦めてほしい」
高崎さんの目をまっすぐ見つめながらハッキリとそう言った由弦くん。
その真剣な瞳を見て本気だと感じ取ったのか、高崎さんの目にうっすらと涙が浮かんだ。
「……分かりました」
ぽつりと零れ落ちたその言葉からは高崎さんの哀しみがあふれていて。
自分が言われたわけでもないのにどうしようもなく胸が痛んだ。


