「由弦くん、私もうちょっと散歩するから先戻っててくれる?」
「じゃあ俺も一緒に……」
「ダメだよ。男女違うけど一応ライバル校なんだから」
「あ、そう言えばそうだね」
忘れてた、と手をポンッと叩く由弦くんに自然と笑みが零れる。
「じゃあ先戻ってるね」
「うん。またね」
引き返す由弦くんに手を振って、反対方向へと歩みを進める。
試合があるこの会場は大きな公園の一角にあって、確か最近建て替えたばかりだと聞いた。
遊歩道を少し歩くと、遊具がたくさんある広場に出て、子供たちが元気よく走り回っているのが見える。
広場を抜けてさらに進めば、サッカー場が見えてきた。
人がいないところを見ると、どうやら今日は使われていないらしい。
「この先って何かあったっけ?」
確か、サッカー場の裏に小さな体育館があったような……。
「戻ろっかな」
これ以上進んでも何もない。
そう思った私は、試合会場に戻ろうと振り返った。
その時。
「……え?」
振り返った私の目に飛び込んできたのは、知らない男たち。
「アンタが相原 六花?」
「……っ」
ヤバイと、直感で思った。
けど、そう思った時にはすでに遅くて。
「……ぅ」
気付けば目の前に迫ってきた男たちにお腹を殴られていた。


