もう、いないよね……。
玄関を開けて確認なんて出来ないから、自分の部屋に戻って確認することにした。
すると、
「うそ……」
カーテンの隙間から玄関先を見れば、まだ佐久間がいて。
「なんで……」
まだいるの?
なんで帰らないの?
なんで……偽りの彼女なんかにそこまでするの?
佐久間の言った“出てくるまで待ってる”という言葉が脳裏をかすめたけど、すぐに頭を振って消し去った。
どうせ今だけだ。きっとすぐに帰る。
出て行ったって憎まれ口を叩くだけだもん。
だったら会いたくなんかない。
そう思って、カーテンを閉めてベッドに倒れ込んだ。
………ん?
しばらくして、ふと聞こえてきた“音”。
その音に意識が戻って耳を澄ますと、それが雨音だということに気づいて勢いよく飛び起きた。
自然と窓の方へと向いていく足。
いるわけない。
そう思っているのに、確認しなきゃ気が済まなくて。
「……っ、うそ……っ」
シャッとカーテンを開けて玄関先を見下ろせば、さっきと全く同じ場所に佐久間が立っていた。


