「デートなんかしてない」
「……っ」
ウソばっかり。
じゃあなんであの場所にいたの?
なんで二人一緒にいたの?
言い逃れ出来ない状況なのにデートじゃないなんて、そんなうそ言わないでよ。
「相原、俺は──」
「ごめん、帰って」
「相原!!」
後退するのをやめて、逆に佐久間の方へと突き進む。
「相原聞けって!」
「聞きたくない!帰って!」
すれ違いざまに腕を掴まれたけど、思いっきり振り払って玄関へと向かった。
……やめてよ。
今は何も聞きたくない。
これ以上佐久間といたら、言いたくないことも言ってしまう。
だから、佐久間と顔を合わせたくない。
「相原!!」
一度も佐久間の顔を見ることなく家の中へと入り、ドアに背中を預けたままズルズルとその場に座り込む。
「……相原、出てくるまで待ってる」
「……っ、」
目を閉じて溜め息を吐き出したとき、まるで返事をするかのように背中から聞こえてきた佐久間の声。
佐久間……。
ドア越しに伝わる佐久間の真剣な声に胸が苦しいぐらいに強く締め付けられて。
声を押し殺しながら、そっと膝に顔をうずめた。


