「スマホは……っと、あった」



鞄の中から携帯を取り出してロックを解除すれば、画面に表示されているのは不在着信のお知らせ。



それは他の誰でもない、佐久間からで。


繁華街で別れてから鳴りっぱなしだった携帯。


出たくなんかないから、サイレントモードにして鞄につっこんでおいたんだけど、どうやらまだ諦めていないらしい。



着信もメールも、最終はつい数分前。



何も聞きたくないし、見たくもない。


だから、メールの内容を確認せずにまた鞄に突っ込んだ。



あー、もうモヤモヤする。

お風呂にでも入ってリラックスしよう。


そう思った時。



「───相原」



耳に届いた佐久間の声に、俯いていた顔がゆっくりと上がった。




「なんで……」




顔を上げれば、家の前に佐久間がいて。



佐久間だと認識した途端、さっき繁華街で佐久間と会ったときと同じように足が一歩、後退した。



「相原、」


私が後退するのと比例してこちらに歩みを進めてくる佐久間。



いつもとは違う真剣な表情に心がざわついて落ち着かない。




なんで……佐久間がここにいるの?


高崎さんと一緒にいるはずじゃ……。



高崎さんと佐久間が一緒にいた所を思い出して、また胸がキュッと苦しくなる。




「……なんで、こんな所にいるの?高崎さんとデートじゃなかったの?」



そうであって欲しくないと思っているのに、口から出るのはそんな言葉。


肯定されたら傷付くのは自分のくせに。