今の今まで強気に喋ってた佐久間が声を上擦らせてあたしから距離を取った。


何。なんで後ずさるの。

何かヤマシイことでもあるの?



「ねえ。女の子に抱き着かれてデレデレしてるのは浮気にならないの?」



自分でも分かる。背後にまがまがしいオーラが出てるのが。


一歩、また一歩と後ずさりする佐久間を追いかけて、下から睨みつける。



「で、デレデレなんかしてな──」

「でも、抱き着かれてたよね。人前で」

「それは──」

「別にいいけど。好きにすれば?」



フイッと顔をそむけて佐久間の横を通りすぎる。



「ちょ、相原!」

「もう帰る!」



持っていたオバケの布を佐久間に投げつけて走り出す。


佐久間が呼び止めてきたけど、そんなの知らない。

絶対に立ち止まってやるもんか。







それから、スタート地点である広場に戻った私は、ななちゃん先輩に「先帰ります!」と言って先に合宿所へと戻った。


いつもなら問いつめてくるななちゃん先輩も、あたしの機嫌が悪いせいか何も問いつめて来ず。ななちゃん先輩と一緒にいた由弦くんも声をかけては来なかった。


というより、私が怒ってるから声をかけられなかっただけだろうけど。



そんなこんなで、初めての合同肝試しは最悪な気分で終了した。