「友達だよ。──今の所はね」
「……っ、お前」
もしかしてアイツのこと……。
その言葉はなぜか言葉にならなかった。
「……チッ」
まだ中身が残っている缶をさらに強くにぎり潰して、勢いのままゴミ箱へと力まかせに投げ捨てる。
「──お前には渡さねぇ」
それだけ言い残して俺は踵を返した。
これ以上ここにいると感情が抑えられない。
そう思ったから。
「佐久間」
そんな感情を知ってか知らずか、俺を呼び止めた澤本。
足を止めて肩越しに振り返れば、視線の先にあったのはさっきと変わらない澤本の穏やかな笑顔で。
「佐久間が素直になれば六花ちゃんも応えてくれると思うよ」
その言葉が善意だってことぐらい分かってた。
分かってた、けど。
“六花ちゃんのこと理解してるから”
遠回しにそう言われているようで、俺は澤本の言葉を素直に受け取ることが出来なかった。
「俺は六花ちゃんの味方だから」
それだけ。
と、にっこり微笑んだ澤本に苛立ちが募る。
澤本に無言をくれてやった俺は、重い足を無理矢理動かし、再び歩みを進めた。
『俺は六花ちゃんの味方だから』
その言葉でさえ裏があるんじゃないのかと疑っている俺は心の狭い人間なのかもしれない。
【佐久間side end】