「名前呼ぶぐらい許してよ。今更変えられないんだから」
「………」
向けられる爽やかな笑顔は偽りなんかではないと分かっているのに、無性にイラついて仕方ない。
「そんな恐い顔するなって。……で、六花ちゃんのことどう思ってるの?……って聞くまでもないか」
じゃあ聞くなよ。
何もかも見透かしてそうなその笑顔に本気でキレそうになった。
けど、グッとガマンして、その感情を相原から奪い取った缶へとぶつける。
そのせいで握りしめた缶がピキッとにぶい音を立てた。
「なに聞いたのか知らねぇけど、これ以上アイツに近付くな」
そう低い声で牽制すれば、
「……んー、それは無理だね」
返ってきたのは動じていない澤本の言葉。
「あ“?」
さすがの俺も感情のセーブが効かなかった。
「どういう意味だよ」
「どういうって言っただろ?六花ちゃんとは友達だって」
悪びれもなくさらりとそう言い放った澤本に更に苛立ちが募っていく。
「本当に友達だけかよ」
自分でも分かっている。
子供みたいだって。
けど、アイツのことになるとどうしても余裕がなくなるんだ。
こればっかりは本当にどうしようもない。