恋する君の可愛いつよがり。



「……紅茶」



結局、先に折れたのは私の方だった。


佐久間だったらもっと素っ気ない態度を取るんだろうけど、由弦くんにはなぜだかそれが出来なくて。



「六花ちゃん、笑ってごめんね?これで機嫌直して」



それはきっと、この偽りのない優しい笑顔のせいだと思う。


この穏やかな笑顔が、怒りなんて全部消し去ってしまうんだ。





「昨日、どうだった?上手く話せた?」



プシュと手慣れた手付きでプルタブを開けながら私の顔を覗き込みにきた由弦くん。



「……っ」


突然の至近距離にたった今飲んだばかりの紅茶が逆流しそうになった。



「六花ちゃん?」


「え、えーっと……」



ちょ、ちょっと近いです、由弦くん……!



私はあまりの近さに耐えられなくて、目の前にいる由弦くんからスススと後退する。


だって、至近距離で由弦くんの透き通った瞳に見つめられたらドキドキするんだもん。


直視なんて出来ないよ。



「お、おかげさまで仲直りすることが出来ました。ありがとう、由弦くん」



でも、最後の言葉だけはどうしても目を見て言いたかったから、恥ずかしながらもちゃんと由弦くんの目を見てお礼を言った。


すると。



「ホント!?仲直りできたんだ!良かった!」



私の両手をぎゅっと強く握って、まるで自分のことのように喜んでくれた由弦くん。


向けられるお日様のようなまぶしい笑顔に心がポカポカと温かくなっていく。