「りーっかちゃん」
「うわっ」
うっとりと練習試合の光景に浸っていた私の肩を、誰かが背後からポンッと叩いた。
恐る恐る肩越しに振り返ると、後ろにいたのはなんと由弦くんで。
「なんだ、由弦くんかぁ……」
ホッと安堵のため息がこぼれ落ちる。
もう、驚かさないでよ。ビックリしすぎて変な声出ちゃったじゃん。
「なんだってヒドイね、六花ちゃん」
「……あ、ごめん」
口ではヒドイとか言ってるけれど、由弦くんの瞳はいつもと変わらず優しげで。
そんな由弦くんを見るとなぜだか素直に謝ってしまう自分がいる。
「いいよいいよ。謝らないで。驚かせた俺が悪いんだから。
ねぇ、六花ちゃん。話したい事あるからあっち行こう?」
「え?あ、うん」
突然由弦くんに腕を引かれて立たされた私。
手から落ちたボールは由弦くんの登場に驚き、ポカンと大口を開けているチームメイトの元へと転がっていく。
「ちょっと抜けるね」
そう言った言葉はきっと彼女達の耳には届いていないだろう。
だって、みんな放心状態だったから。


