恋する君の可愛いつよがり。



あの時の私の頭の中には、ライバルだとか敵だとかそんなものは一切なくて。


目の前で繰り広げられる死闘にただただ目を奪われ、感嘆の息をもらすだけ。



あの試合で聖南が輝けたのは、きっと相手が強かったからだと思う。


つまり、私達藤ノ宮(フジノミヤ)の男子バスケ部が強かったから。


最初こそ攻められたものの、その後の巻き返しに聖南のスタメン達は驚き、そして焦っていた。


試合前に由弦くんから佐久間の技量は聞いていたんだと思う。


けど、佐久間が入ったことによってチーム力までアップしていたのは予想外だった。



今の藤ノ宮は前よりも聖南に近づいている。


佐久間の力がたった半年という短い期間で藤ノ宮をそこまで成長させたんだ。



凄いと思う。本当に。


佐久間なら決勝に、ううん、優勝してくれるって、そう信じてる。


だって、今もまだ試合中の佐久間の楽しそうな笑顔が頭から離れない。


あのまぶしい笑顔を見たら、なぜだか分かんないけど優勝してくれそうな気がするんだよね。




「……ふふっ」



さっきの試合は、私にとって本当に至福とも言える時間(トキ)だった。