恋する君の可愛いつよがり。



「ほーぅ」

「ん?」


隣から聞こえてきた含みある声色に振り向くと、そこにはよからぬ笑みを浮かべながら何度もうなづいているななちゃん先輩がいて。


そんなななちゃん先輩の視線をおそるおそるたどっていくと、そこにはチームメイトとお喋りしている由弦くんの姿が。



「せ、先輩、なにか?」



なーんか嫌な予感がするんですけど。



「いーや、なにも?」



いや、何もないことないですよね。


明らかに何かを企んでいるようなななちゃん先輩の表情にヒクヒクと引きつる右頬。



「先輩」


「んー?」


「先輩」


「んー」


「先輩!」


「………」



もう!何企んでるのこの人は!!






私は気づいていなかった。


私とななちゃん先輩のやり取りを佐久間が複雑な表情で見ていたことを。


それと同時に由弦くんに向けて鋭い視線を送っていたことを。


私は、全く気づいていなかった。