実は今日、私はまだ佐久間と一言も喋ってなかったりする。
基本男子とは別行動だから仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
でも、それでもせっかく仲直りしたんだから喋れるものなら喋りたい。
そう思うのは自然なことだよね?
「……ふーん。さっくんと仲直りねぇ……」
そう聞こえたかと思うと、突然ガシッと掴まれた両肩。
掴んだ人はもちろんななちゃん先輩で。
「ちょ、ななちゃんせんぱ──」
そろっと見上げれば、ななちゃん先輩の意味ありげな笑みが目に映った。
「………」
不気味すぎるその笑顔にもはや嫌な予感しかしない。
「……六花ちゃん」
「は、はひ」
あ、噛んだ。
迫り来るななちゃん先輩のお顔が怖すぎて思いっきり噛んでしまった私。
そんな私を完全スルーしたななちゃん先輩はさらに顔を寄せてきてボソッと一言つぶやいた。
「それってさ」
そう、ななちゃん先輩が言った時だった。
「おーい。集まれ。今日の練習試合の相手、聖南高校が来たぞー」
体育館の出入口から笛を吹きながら入ってきたのはいかつい顔をした我らの顧問、坂井先生。