猫はひなたぼっこが大好き。



いつも太陽ばっかり見上げていて、きっとその下に咲いている野草なんて目をくれないんだ。










「お姉ちゃん…」




わたしを見つけたお姉ちゃんが手を振ってきた。

でもわたしの隣にいた彼に気付くと、笑っていた顔が曇り、その手を止める。

どうしたらいいのか分からない様子で戸惑っていた。




文化祭に来るなんて聞いてないのに。

どうして来たんだろう。




「ちょ、ちょっと待ってて。わたし行ってくる」

「いいよ別に」彼に呼び止められる。

「えっでも」



ー心の準備ができたら、で。いざ会うとなると緊張するのな。

まだ彼はお姉ちゃんに会う覚悟ができていないのに。



「どうせCD返す予定だったし。ちょうどいいんじゃねえ」

「…本当にいいの?」

「ん」

「伊織君」

「なに」

「大丈夫…?」


彼は何も答えず、「CD取ってくるわ」と教室に戻っていった。

そして彼の姿が見えなくなったのをきっかけに、お姉ちゃんがわたしのところへ駆け寄ってきた。