かたつむりの恋

帰りたくないって、
どういうことよ?


どうって、
まんまだよ。
家に帰りたくないって
ことだろ。
お前、あったま、わりぃな。


なっ、なに、
その言い方。
腹立つぅ~。


もう、
こんなやつ、
構ってないでチーズだ、
チーズ!
さっさとスーパーに行こう。


私がその場から、
立ち去ろうとしたら、








ごめん、
八つ当たりーーー


バツ悪そうに、
鈴木が言った。


八つ当たり?
なんで?
嫌な事、あったの?
お母さんに怒られたとか?


違う。
そのぉ……なんだ、
近々、お父さんって、
呼ぶことになる人が、
うちに来てる。
今な。


呼ぶことに?
なる人?


そっ、
俺んち、母さんだけだったろ?
離婚してるから。


それで、
今回、新しくお父さんが、
出来るんだ。
その人が今、家にいる。


そうなんだぁ……。
嫌な人なの?
そのぉ……、
殴ったりとか、
暴れたりとか……。


えっ?
お前、テレビに影響され過ぎ。
全然、めちゃくちゃ、
いい人だよ。
優しいし。
妹なんかは、
父さんの記憶あんま、ないし
だから、
新しいお父さんに、
めちゃ、なついてるよ。


じゃあ、なんで?
なんで、帰りたくないの?


うーん、
何でだろうな。
よく、わかんねぇや。
俺も考えてんだけどな、
何でだろって。









何となく、
それ以上、何も言えなくて、
ただ、私も鈴木の隣にしゃがんで、
カタツムリを見た。


カタツムリは公園に出来た、
水溜まりの回りを、
ノロノロ、
ノソノソ、
トロトロ…………
ゆっくりと這っていた。