世界で一番、ずるい恋。





ぎゅっと力一杯抱きしめる腕に、私は応えることが出来なかった。

浩也は私から離れると、もう一度優しく笑った。



そして、私の横を通り過ぎた。

だけど卒業式の日のように、手は伸ばさなかった。


だって私が掴みたい人は、あそこにいるから。




「……律!」




名前を呼べば、顔を上げた。

少しだけ大人びた彼は、相変わらずかっこ良かった。



もう迷いは無かった。

私は、律の方へと駆け出した。




沢山間違えた。

何度も嘘をついて、苦しめて、傷付けた。


そしてようやく分かったよ。




「……茜っ」




そのまま抱きつけば、律は受け止めてくれた。

ぎゅっと私を抱きしめてくれた。


……律だ、本物の律だ。



あのね、律。

私はずっと言えなかったことがあったの。




「……好きだよ、律」

「うん」

「……ずっと私は、貴方が好きだった」

「俺も好きだよ。今も変わらずに、俺には茜だけだ」





今度はもう間違えたりしない。

この手を、離したりしない。