ぎゅっと力一杯抱きしめる腕に、私は応えることが出来なかった。
浩也は私から離れると、もう一度優しく笑った。
そして、私の横を通り過ぎた。
だけど卒業式の日のように、手は伸ばさなかった。
だって私が掴みたい人は、あそこにいるから。
「……律!」
名前を呼べば、顔を上げた。
少しだけ大人びた彼は、相変わらずかっこ良かった。
もう迷いは無かった。
私は、律の方へと駆け出した。
沢山間違えた。
何度も嘘をついて、苦しめて、傷付けた。
そしてようやく分かったよ。
「……茜っ」
そのまま抱きつけば、律は受け止めてくれた。
ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
……律だ、本物の律だ。
あのね、律。
私はずっと言えなかったことがあったの。
「……好きだよ、律」
「うん」
「……ずっと私は、貴方が好きだった」
「俺も好きだよ。今も変わらずに、俺には茜だけだ」
今度はもう間違えたりしない。
この手を、離したりしない。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.797/img/book/genre1.png)