「何をお願いしたの?」
「んー、秘密」
内容を聞かれて少しドキッとしたけど、さっきまでの浩也の真似をして切り抜ける。
「俺は、茜が幸せでありますようにってお願いしたよ」
私と似たようなお願いだななんて呑気なことを思った。
「だからさ、茜?」
一歩、浩也が近付いてきた。
真剣なその声は、微かに震えていた。
「……一つだけ、答えてほしいことがある」
そう言うと浩也は私に背を向けた。
それにつられて彼の後ろに視線を向けた瞬間、時が止まった。
「……嘘、でしょ?」
だって、浩也の向こう側。
私の瞳は、信じられない人を捉えてしまったから。
諦めたはずだった。
忘れたはずだった。
想いに鍵をしたはずだった。
それなのに、想いはいとも簡単に溢れてきた。
まるでずっとそこにあったように、私の心を占めていく。

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.794/img/book/genre1.png)