「本当、色んなことがあったよな……」




手すりに背中を預けるようにして立ちながら、ちょっと苦い顔をして先生は言った。




「うん、そうだね……」




先生紹介で一目惚れした時は、こんな未来は想像も出来なかった。

貴方を本気で傷付けて苦しめようとする日が来るなんて、一瞬たりとも考えなかった。


先生と出会って、恋をする喜びや幸せを知った。

切なさも、妬みも、苦しさも色んな感情を知れたの。


私は、そうやって沢山の感情を知って、少しだけ大人に近づけた。





「だけど俺は、阿波たちと過ごした三年間に後悔は無いよ」




その曇り一つ無い笑顔に、目を背けたくなった。

……だって私は、そんな風に断言できない。


どっちかっていうと、後悔の方が多いくらいだよ。

もし過去に戻れるのなら、きっと何一つ同じ道を選んだりしい。




「俺は、阿波たちと出会えて幸せに思うよ」